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議会報告

議会質問

【2018年6月定例議会】 2017年6月16日

本県の地方創生の取り組みについての質問

質問政府関係機関の地方移転にかかる年次プランについて

答弁(知事) 本件への移転対象となっている環境調査研修所など3機関4件については、昨年3月に国が策定した「政府関係機関移転基本方針」を受けて、今後の取組みと「目指す将来像」をしめす年次プランを、地元市、関係省庁、研究機関等と共同で策定したところである。  環境調査研究所は、昨年10月、北九州市に「北九州研修事業事務局」を開所し、「廃棄物・リサイクル専攻別研修」「日中韓三ヶ国合同環境研修」「国際環境協力基本研修」の3つの研修を始めた。  水素材料分野では、今年1月、産業技術総合研究所が、九州大学との研究連携拠点となる「水素材料強度ラボラトリ」を伊都キャンパス内に設置し、共同研究をスタートさせた。  理化学研究所のバイオ分野では、今年度から理化学研究所が、九州大学、久留米大学と共同で、健康の増進に役立つ革新的な機能性表示食品の開発を開始した。

会議録全文

大田満 大田 満

本県の地方創生の取り組みについて質問いたします。
今月九日、政府は、まち・ひと・しごと創生基本方針二〇一七を閣議決定しました。この基本方針二〇一七のサブタイトルは、地方創生の新展開に向けてとなっており、その基本的な考え方は、平成二十九年度は、まち・ひと・しごと創生総合戦略の中間年であり、既存の取り組みを加速化するための新たな施策により、地方創生の新展開を図るとされています。地方創生については、本県においても平成二十七年十二月に、本県における人口の将来展望を踏まえ、地方創生を実現するための施策をまとめた福岡県人口ビジョン・地方創生総合戦略が策定されました。また小川知事は、本年二月議会の所信表明において、「平成二十九年度を、地方創生の具体化に全力で取り組み、福岡県、九州、そして日本を元気にする年にしていきたい」、あわせて「誰もが住みなれたところで働き、安心してお子さんを産み育て、長く元気に暮らすことができる、そうした地域社会をそれぞれの地域につくっていく地方創生の実現を目指す」と、力強く述べられています。この知事の今年度に向けた決意を踏まえれば、当然のことながら、国の基本方針二〇一七に盛り込まれた施策や考え方を活用できるよう、本県の総合戦略の施策に工夫や改良を加え、施策の実効性、有効性を高めていくことが必要であると考えられます。そのような観点から質問いたします。
まずは、政府関係機関の地方移転に関してお尋ねします。国の基本方針二〇一七では、政府関係機関移転の着実な推進として、「研究機関・研修機関等の地方移転について、平成二十九年三月に関係者間で共同して、五年程度の具体的な取組内容や推進体制等を明確にした年次プランを作成した。今後、同プランに基づき、地域イノベーションの実現や研究成果の地域産業への波及等、地方創生に向けて、それぞれの取組を着実に進める。」と記載されています。本県では、政府関係機関の地方移転に関して、平成二十七年度に市町村と連携して、国に対して強力な働きかけが行われ、その結果、平成二十八年三月に、まち・ひと・しごと創生本部で決定された政府関係機関移転基本方針において、理化学研究所については福岡市に応用化学分野等における地域イノベーション創出に向けた連携拠点の設置、そして久留米市にバイオ産業振興の共同研究の展開、また産業技術総合研究所については九州大学伊都キャンパスに水素材料強度研究連携拠点の設置、さらに環境調査研修所については北九州市に研修拠点の設置という四つが移転対象として位置づけられたと聞いております。
そこで知事に質問いたします。政府関係機関移転基本方針に位置づけられた四つの研究機関等に関して、ことしの三月に作成されたという年次プランでは、どのような取り組みを行うことになっているのか、それぞれの機関ごとに簡潔に御説明ください。
その上で、今後四つの研究機関等の移転の取り組みが、それぞれの地域におけるイノベーションの実現や研究成果の地域産業への波及等、地方創生の実現に向けてどのように結びついていくと考えられるのか。また、研究機関等の移転の取り組みが、それぞれの地域の地方創生に効果的につながっていくよう、地元市と連携してどのように取り組んでいかれるのかをお答えください。
次に、地方生活の魅力の発信についてお尋ねします。国の基本方針二〇一七では、地方生活の魅力の発信等として、地方における豊かな自然、固有の歴史、文化、伝統などの魅力について、子供のころから学び、触れさせることが重要であると記載されています。私の地元福岡市早良区は、北部の西新、藤崎地区など、児童数の増加で小学校の校舎が手狭になるくらい居住者が年々ふえ続けている地域がある一方で、南部の中山間地域では人口の減少、高齢化が進み、集落の中で住民同士の支え合いが従来のようにできなくなるなど、基本的な地域コミュニティーの維持が困難になっている地域が存在します。このような中山間地域の集落の維持や再生を目指すために、国では、住民に必要な生活、福祉サービスを一定エリア内に集め、周辺集落と交通ネットワーク等で結んだ、いわゆる小さな拠点を形成するといった方向性を明確に打ち出しており、それに基づき、県では小さな拠点づくりに向けた市町村の取り組みに対する支援を行っているところではありますが、あわせて、私は、地域の子供たちが自分たちの生まれ育った地域に誇りとアイデンティティーを持ち、仮に進学や就職等で故郷を一時的に離れても、将来故郷に戻ってきたいという気持ちになるための取り組みも重要であると考えます。
このような取り組みの先進事例として、本県内では、糸島市と県で共同して取り組んでいる糸島の未来の人材を創る「いとしま学」プロジェクトがあります。このプロジェクトでは、糸島地域の子供たちが、郷土の文化、歴史などを学び、郷土である糸島に誇りと愛着を育むことを目的とし、小中学生向けに「いとしま学」のテキストを作成、小中学校の総合学習授業で活用されている、それが非常に好評であるとお聞きしております。
そこで、この点に関連して知事に質問いたします。まず、この「いとしま学」プロジェクトについて、平成二十七年度から取り組んでいるとお聞きしていますが、今年度はどのような事業効果を狙って、どのように事業を展開しようとしているのか。昨年までの事業内容にさらに工夫を加えた点があれば、お聞かせいただきたいと思います。
また、この取り組みは、国の基本方針二〇一七にも記載されているとおり、普遍性がある取り組みと言え、こういった取り組みが必要かつ有効な地域は県内で糸島地域のみにとどまらないと考えますが、同様の取り組みを県内のほかの地域へ広げていくことについて知事はどのように考えるのかお聞かせください。
最後に、本県の地方創生総合戦略に掲げる施策の検証と見直しについてお尋ねします。国では、平成二十六年度の国の地方創生総合戦略を策定した後、平成二十七年度は地方の体制整備、平成二十八年度は地方創生の本格稼働、そして平成二十九年度は地方創生の新展開と位置づけ、毎年地方創生総合戦略の見直し、改定を行ってきています。本県の地方創生総合戦略においても、基本目標の達成に向け、施策ごとに重要業績評価指標(KPI)を設定し、これをもとに実施した施策の効果を検証し、必要な改善を行うPDCAサイクルを確立するとあります。
そこで知事に質問いたします。国の総合戦略は、毎年改定を重ね、その都度新しい施策や考え方が加えられています。それを受け、県の総合戦略に掲げる施策についても、スピーディーな検証と臨機応変な見直しを行っていくべきと考えますが、今後、実績の検証を踏まえた県の総合戦略に掲げる施策の見直しをどのように進めていくのか、知事の考えをお聞かせください。
以上、知事には地方創生の実現に向けて前向きな御答弁をお願いして、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。

答弁者 知事(小川 洋)

まず初めに、政府関係機関の地方移転にかかわる年次プランでございます。本県への移転対象となっております環境調査研修所など御指摘のありました三機関四件につきましては、昨年の三月に、国が策定をいたしました政府関係機関移転基本方針、これを受けまして、今後の取り組みと目指す将来像を示す年次プランというものを、地元市、関係省庁、研究機関等と共同で策定をしたところであります。
環境調査研修所につきましては、昨年の十月、北九州市に北九州研修事業事務局を開所いたしまして、廃棄物・リサイクル専攻別の研修、日中韓三カ国合同環境研修、国際環境協力基本研修の三つの研修を始めております。今後は、県、北九州市、環境省が連携をいたしまして、研修内容等の高度化を図りながら、効率、効果的な研修を継続してまいります。
水素材料分野につきましては、ことしの一月、産業技術総合研究所が、九州大学との研究連携拠点となります水素材料強度ラボラトリを伊都キャンパス内に設置をいたしまして、共同研究をスタートしているところであります。今後、本ラボラトリにおきまして、安全性と経済性を兼ね備えた水素材料の開発を進めてまいります。
理化学研究所のバイオ分野につきましては、今年度から理化学研究所が九州大学、久留米大学と共同で、健康の増進に役立つ革新的な機能性表示食品の開発を開始したところであります。また、応用化学分野におきましては、理化学研究所、九州大学、福岡市、この三者によりまして共同研究の実施に向けた協議が進められているところであります。理化学研究所の両分野におきましては、こうした共同研究の展開を通じまして、研究連携拠点の設置を目指すことといたしております。
次に、政府関係機関移転の取り組みが地方創生に及ぼす効果と地元市との連携についてお尋ねがございました。本県には、九州大学を初めとする研究機関、また自動車、ロボットといった先端産業分野における企業の集積がございます。こうした本県の強みであります集積をする研究機関、企業に加えまして、移転される政府関係機関、これらが一体となりまして活動することによりまして、県の将来を支える新しい成長産業の育成につながっていくものと考えております。今後とも、アジアの環境人材の育成拠点の形成、また環境技術等の海外展開、また水素、燃料電池分野の産業育成、バイオ産業の振興など、年次プランに掲げております目指す将来像が実現できるよう、地元市と連携して人材の育成、共同研究を着実に進めてまいります。
次に、「いとしま学」プロジェクト、これについてお尋ねがございました。このプロジェクトは、将来の糸島地域を支えるお子さんたちはもとより、住民の皆さんが糸島地域の歴史、自然、文化などを学ぶことによりまして、郷土に誇りや愛着を持つことを目的に、県と糸島市が協力して実施をしてきているものでございます。平成二十七年度に歴史研究者、農業者、漁業者など地元の皆さんの御協力のもと、副読本「いとしま学」の小学生版及び中学生版を作成をしたところであります。現在、市内の全ての小中学校の総合的な学習の時間などにおきまして、教材として活用をされているところであります。また、今年度は、新たに糸島市の自然、遺跡などを映したDVDを作成をいたしまして、これを図書館や公民館に配付することとしております。そして、これを社会人向けの生涯学習において活用していただくことといたしております。県におきましては、他の圏域におきましても、京築地域の名所や歴史などを題材とし、子供たちに地域の魅力を伝える京築かるた、筑後地域の豊かな自然、文化、歴史、産業を学ぶちくご子どもキャンパス、田川、筑豊地域にゆかりのある著名人などに講義をしていただき、ふるさとに誇りを持つ人材育成をする田川飛翔塾といった取り組みを、各地で実施をしているところであります。今後とも、それぞれの地域の実情やニーズを踏まえながら、郷土の誇りや愛着、また先生が御指摘ありました、みずからのアイデンティティー、これを育む取り組みを進めてまいります。
次に、県の総合戦略に掲げる施策の見直しについてでございます。総合戦略にかかわる施策につきましては、数値目標、いわゆるKPIの進捗状況をもとに、その効果を検証してきております。昨年度の検証では、総じて順調に推移しているものの、地方創生を進める上で重要な正規雇用の促進、子育て支援などにおきまして、施策の強化が必要であると、そういう結果が出ております。このため正規雇用の促進につきましては、平成二十七年十月設立いたしました正規雇用促進企業支援センターにおきまして、引き続き正規雇用への転換を企業に働きかけていくとともに、今年度から新たに若者の職場定着支援の取り組みを実施することといたしました。子育て支援におきましては、待機児童の早期解消に向け保育所等の整備を進めるとともに、保育の担い手を確保するため、潜在保育士に対する再就職の意向調査、その結果得られた再就職希望者と保育所とをマッチングするコーディネーターの増員を行うほか、保育補助者の雇用費用を新たに助成することといたしております。このように、今後ともKPIの進捗状況に基づく施策効果の検証、県民意識調査における県民の皆様のニーズの変化を踏まえるとともに、国の新たな施策の検討状況に迅速かつ的確に対応していくことで、実効性のある施策への見直しというものを図ってまいります。