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議会報告

議会質問

【2015年12月定例会】 2015年12月9日

外国資本による水源地域買収の対策についての質問

会議録全文

大田満 大田 満

私の地元福岡市早良区は、市内最大の森林面積を有しておりまして、森林の割合は六四%と、県平均を二〇%上回る緑豊かな地域であると同時に、室見川の上流域の曲渕ダムを含む貴重な水源地域としての側面も持ち合わせております。一般的に、森林は林業が営まれるだけではなく、水源涵養、土砂災害防止、土壌保全、生物多様性保全など多面的な役割があると言われております。国の試算によりますと、その評価額は七十兆円であり、単純に考えても我が国のGDPの一三%に値するそうです。
このような貴重な森林に対して今、見過ごすわけにはいかない問題が浮上しております。それは、外国資本による森林買収の動きであります。国の調査、林野庁の報告によれば、居住地が海外にある外国法人または外国人と思われる者による森林買収の事例は、平成十八年に二件、十八ヘクタールであったものが、平成二十六年までの累計では九十二件、一千百五十三ヘクタールと大幅にふえてきており、特に北海道で森林買収の動きが加速化しており、本県でも面積はわずかでありますが、糸島市で一件の事例が発生しております。
近年、増加する外資の森林買収、その背景には、我が国において外国人の土地利用規制が極めて緩いことを第一に、続いて森林所有者が採算のとれない森林を手放そうとする状況があること、さらに日本の森林価格が国際的に見ても安い、廉価であることが要因として挙げられます。あわせて、世界的な人口の増加、地球温暖化による真水資源の枯渇と、地球的に慢性的な水不足が懸念される中で、年間の降水量が一千七百ミリを超し、世界的にも恵まれた我が国の水資源がターゲットになっているのではないか、外資により森林が大規模に買い占められ、水資源の乱開発が行われないとも限りません。実際、北海道では、一件当たり三百ヘクタール近くの面積の森林が外資により買収された事例も報告されております。こういった懸念は、杞憂に終わればよいのですが、強い危機感を抱くのは、私だけではないと思います。
本県の森林は五百万県民の水がめを維持し、生活用水、農業用水など良質の水を安定的に供給することで、県民生活に大きく寄与しております。それゆえに、とりわけ水源地域における目的不明の大規模な土地取引は、地元住民のみならず県民生活に大きな不安を与えるものになります。
そこでお尋ねいたします。本県では、水源地域における土地取引に関する土地所有者の情報、特に大規模な取引についてどのように把握しているのか、今、国土利用計画法や森林法などの関係法令はあるようですが、こういった法令で十分把握できているのかお伺いいたします。
次に、関係法令の整備についてお伺いいたします。平成二十五年十二月の我が会派の代表質問において、外国人の土地買収規制に関する問題に対し、単に水資源、森林資源の保全にとどまらず、我が国の国防と安全保障にかかわる問題として捉え、本来、自治体の条例で対応するレベルではなく、これは国において法改正を行うべきとただしました。これに対し小川知事は、水源地など公益性の高い土地に関し、外資による不明朗な土地取引が広がることに危幾感を持つ、歯どめをかける仕組みが必要と考え、特に水源地域の保全については土地取引の規制を含む法令の整備等を行うよう、全国知事会を通じて国への要望を続けると答弁されました。いまだこの要望は実現されていないようですが、このような状況の中、自治体によっては独自に水源地域に関する保全条例を制定する動きもあります。全国十七の道県では、水源地域に関する保全条例が制定されています。しかしながら、私が調べたところでは、これらの条例は事前届け出によって情報は把握できるものの、助言、勧告、過料(過ち料)といった規制面では非常に軽く、したがいまして実効性の確保という点では到底期待できるものではありません。
そこで知事にお尋ねします。我が会派の質問から二年が経過しました。水源地域の保全面では直接的な影響はないにせよ、本県においても森林の買収事例が発生しております。その間、継続して知事は、法令の整備等を進めるよう国への働きかけを行っているとは思いますが、国の対応に一向に進展が見られないのであれば、もう国任せではいられないのでは。この状況をどう考えるのか。本県の水源地域における外国資本の土地買収の規制について、これからの取り組みに対する知事の所見をお伺いいたします。
水源地域などの土地取引に関して規制をかけることは、財産権の侵害につながるといった懸念もありますし、容易に実現できるものではないことは理解しております。しかしながら、我が国にとって水や森林は貴重な資源であり、本県にとっても同様であります。知事には、県民の安全、安心な生活を確保する上でも、今後、本県の水源地域をしっかり守っていくという覚悟を持ったお言葉で答弁いただきますようお願いして、私の質問を終わります。

答弁者 知事(小川 洋)

水源地域における土地所有者に関する情報についてでございます。国土利用計画法におきましては、土地の投機的取引と地価高騰の抑制、適正かつ合理的な土地利用の観点から、一定面積以上の土地取引につきまして、契約締結後二週間以内に県に届け出を行う必要があります。無届けの場合には罰則規定も定められているところであります。また、森林法におきましては、所有者の異動情報を適切に把握する観点から、森林の規模にかかわらず、新たに土地の所有者となった日から九十日以内に市町村に届け出が必要とされており、無届け等の場合には罰則規定も設けられているところであります。しかしながら、これらの届け出は、まず土地の取得者が外国資本であるかどうかの確認が困難であります。また、国土利用計画法では、小規模な土地取引については届け出が不要となっております。また、森林法では、森林に限られておりますことから、県が外国資本による土地取得の全てを把握できる仕組みにはなっていない、それらが現在の実態になってございます。
外国資本の土地買収の規制についてでございますけれども、水源地など公益性の高い土地における外国資本による乱開発の可能性のある大規模な土地取引というのは、県民に不安を与えるものだと考えております。しかしながら、議員御自身も述べられましたとおり、県の条例では、この外国資本による土地取引を規制することは困難であります。このことから、国におきまして法令等を整備することが必要と考えております。この七月にも、国に対し要望したところでございます。このため、今後とも土地取引の規制を含む法令等の整備を行うよう、知事会等を通じまして県としても積極的に働きかけを続けていきたいと、このように考えております。