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議会報告

議会質問

【2016年6月定例会】 2016年6月30日

中山間地域における諸課題についての質問

質問地域コミュニティの活性化について

答弁(知事) 人口減少や高齢化が進行する中、防犯・防災・高齢者の見守りといった地域の様々な課題に対応していくためには、地域コミュニティを活性化させ、その機能を高めていくことが必要である。  県では、これまで、地域コミュニティ活動を担う人材を育成するため、自治会役員、市町村職員を対象に、先進事例についての発表とワークショップを行う研修会を開催してきた。  こうしたこともあり、高齢者の孤立化を防ぐための「住民交流サロン」の設置、ウォーキング・元気体操による地域をあげた健康活動の実施、自治会と小中学校が連携した防災訓練の実施といった、市町村における特色ある取組みが広がってきたところである。

会議録全文

大田満 大田 満

中山間地域における諸課題について一般質問を行います。
人口がふえ続けている福岡市にあっても、早良区の板屋地区に代表される限界集落化が進む場所が存在いたします。この板屋地区の人口は、二十年前と比較して、おおむね三五%、十年前との比較では二五%の減少を見せ、住民基本台帳上の人口は、平成二十八年五月末現在で六十五人でありますが、実際に生活を営まれているのは三十人程度、実に住民の八割以上が高齢者であると言われています。地区内にあった小学校の分校は約三十五年前に廃校になり、西鉄の路線バスも平成二十年三月で廃止になっております。今では、一日にわずか二往復しか運行されない乗り合いタクシーが住民の唯一の足となっている状況です。この板屋地区の例はまれなケースなのかもしれませんが、福岡市のような大都市にも、その周辺部に人口減少が進み住民の過半数が高齢者となった地域が存在します。そして、このような中山間地域では、そこに住む人々が住みなれた地域に安心して住み続ける上で、余りに困難な課題が山積している状況です。今回は、このような中山間地域の抱える課題を取り上げて質問いたします。
まず一点目、地域コミュニティーの問題です。中山間地域の多くの集落では、人口減少と高齢化により、住民同士が集落の中で支え合う地域コミュニティーの維持が困難になってきています。今般の熊本地震、その発災直後において、行政の救援が届く前に、住民同士が助け合ったことが効果的であったと言われています。多くの家が地震により倒壊する中で、日ごろから地域住民の強い結びつきが構築されている集落では、例えば、倒壊した家屋の隣人が、倒壊した家の家族構成や、どの部屋で誰が寝ているかまでよくわかっていたため、近所の人たちが力を合わせて倒壊した家から被災者を助け出したという救出劇の模様が報道にもありました。この例からもわかるように、行政サービスが行き届きにくい中山間地域の集落こそ、地域に残された住民同士が支え合う共助が最も重要であり、そのためには、いわゆる自治会等の地域コミュニティーの維持確保が喫緊の課題であると考えます。
そこで知事にお尋ねします。地域コミュニティーの維持確保は一義的には市町村の役割でありますが、本県もコミュニティー確保のために積極的な支援を行う必要があると考えます。本県では、地域コミュニティーの維持確保のために、これまでどのような取り組みをやってきたのか、また今後は具体的にどのような取り組みを行う予定なのかお聞かせください。
二点目は、小さな拠点づくりの考え方についてでございます。冒頭取り上げた板屋地区の場合、住民の足は一日二往復運行される乗り合いタクシーしかなく、地域住民の病院への通院や買い物等、日常生活の維持が大変困難な状況になっています。それゆえに、中山間地域の集落と公共施設や病院、商業施設などが集まる中心部の集落を結ぶ地域交通の確保の問題は、中山間地域に住む住民にとって大変重要な課題と考えます。一方で、地域交通の確保については、これまでの議会においても、たびたび取り上げてこられた課題でありまして、本県においては、既にさまざまな取り組みが行われているとのことです。そこで私は、地域交通の確保が今後ますます困難になっていく中で、限界集落に近い場所に、さまざまな拠点を集約する小さな拠点づくり、その考え方が重要であると考えます。本県が昨年度策定した地方創生総合戦略では、四つの基本目標の中に、「誰もが住み慣れた地域で暮らしていける安全・安心で活力ある地域をつくる」と、またその取り組みの方向の中に、「住民に必要な生活・福祉サービスを一定のエリア内に集める「小さな拠点づくり」を市町村と連携して進める。」との記載があります。
ここで知事にお尋ねします。この小さな拠点づくりの考え方は、中山間地域の対策として非常に重要な考え方だと思いますが、具体的に、どのような方法でこの小さな拠点づくりを進めていくつもりなのか。あわせて、この小さな拠点には、住民、特に高齢者が生活していく上で必要な医療、介護等のサービスの提供や、いわゆる買い物難民対策などさまざまな要素が含まれています。その点を十分に考慮して、本県では、小さな拠点づくりに向けて、どのような体制で取り組んでいくのかお答えください。
三点目でございます。中山間地域の対策に要する財源についてであります。限界集落に対して市町村が有効な取り組みを行おうとした場合に、当然ながら財源が必要になってきます。市町村の中で、人口減少が進むハンディキャップ地域の振興を目的とした法律として、辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律、いわゆる辺地法があります。この法律で辺地地区とは、「交通条件及び自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれず、他の地域に比較して住民の生活文化水準が著しく低い山間地、離島その他のへんぴな地域」と規定されておりまして、県内では、北九州市、福岡市の両政令市を含む二十四の市町村においてこの辺地地区が存在しているそうです。そして、この法律に基づいて市町村が辺地地区において公共施設を整備しようとした場合に、その資金調達を辺地債という地方債が活用できるとのことです。加えて、この辺地債は、元利償還時に元利償還金の八〇%が市町村に交付税措置されるもので、極めて有利な財源措置であるとお聞きしております。
そこで知事にお尋ねします。これまで、県内の辺地地区では、この辺地債を活用してどのような事業が実施されてきたのか、直近三カ年の実績を示して御説明ください。
また、その結果、辺地地区の振興にどのような効果が上がってきていると認識されているのか。さらには、地元からは、地域の活性化を図るために、地域資源を活用した直売所の設置などを望む声が多くあります。今後、本県では、この大変有利な地方債である辺地債を活用して、市町村の中山間地域の対策が効果的に進むよう市町村に対してどのように助言、指導していくつもりなのかお答えください。
これまでにも知事は、中山間地域の諸課題にも含まれる定住人口の維持、拡大のために、雇用の創出を第一に、観光の振興、農林業の経営力強化など、多岐にわたる取り組みを進めていくとの意向を示されております。今回改めて、中山間地域に代表される条件不利地を決して切り捨てたりはしない、むしろ、そこでの公共性を保護していくという強い姿勢を示していただく前向きな御答弁を知事にお願いし、私の一般質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。

答弁者 知事(小川 洋)

まず初めに、地域コミュニティーの活性化でございます。人口減少、高齢化が進行していく中で、防犯、防災、高齢者の見守りといった地域のさまざまな課題に対応していくためには、地域のコミュニティーを活性化をさせ、その機能を高めていくことが必要でございます。県におきましては、これまで地域コミュニティー活動を担う人材を育成していくために、自治会役員、市町村職員を対象に、先進事例についての発表、またワークショップを行う研修会というものを開催をしてまいりました。また、平成二十四年度から、コミュニティー組織の立ち上げ、これについても支援を三カ年行ってきたところであります。こうしたこともありまして、高齢者の孤立化を防ぐための住民交流サロンの設置、ウオーキング、元気体操による地域を挙げた健康活動の実施、自治会と小中学校が連携をした防災訓練の実施といった市町村における特色ある取り組みというのも広がってきているところであります。県といたしましては、引き続き、人材育成のための研修会を開催をするとともに、広域地域振興圏ごとの会議、また県が発行するコミュニティー情報誌「きずな」、県のホームページにおきまして、効果的な取り組み事例について、広くその紹介をしてまいります。また、新たに地域コミュニティーの活性化に取り組もうとされる市町村に対しましては、地方創生支援のためにつくりましたワンストップ相談窓口におきまして個別に先行事例の紹介を行うなど、きめ細かな助言を行っていきたいと考えております。
小さな拠点づくりについてでございます。小さな拠点とは、過疎化、高齢化が進む地域におきまして、商店、診療所、保育所といった日常生活や地域活動に必要な機能というものを基幹集落に集めまして、コミュニティーバスなどで、それと周辺の集落とを結ぶことで、集落の維持、再生、これを目指そうとするものでございます。各地域におきましては、市町村を中心に、地域住民、事業者、農協など幅広い主体の参画のもと、集落の実態についての調査を行い、それをもとに生活支援機能のあり方とその集約化、また各集落を結ぶための手段、そういったものを盛り込んだ計画を策定していくことが必要だろうと思います。国におきましても、こうした取り組みに対する助成制度を設けているところでございます。県におきましては、今年度新たに、公共施設の再整備に関する低利融資に加えまして、集落を結ぶコミュニティーバスの新規路線開設に対する補助率の優遇、地域コミュニティー運送の実証実験に対する助成など市町村の取り組みを支援する制度を創設したところでございます。これらに加えまして、先ほどお答えいたしましたワンストップ相談窓口において市町村に対し必要な助言を行うとともに、また庁内各部局が所管する福祉施設の整備、買い物支援、特産物開発といった小さな拠点の形成に役立つ各種助成制度を活用することによりまして、市町村を総合的、政策横断的に支援をしてまいります。
辺地債の活用についてお尋ねがございました。辺地債というのは、山間地、離島を初め交通条件、経済条件などに恵まれない地域におきまして市町村が実施をする公共的な施設の整備に対して、法律に基づき、財政上有利な交付税措置が行われる地方債でございます。本県におきましては、交通条件を改善するための道路の拡幅、離島航路の新船の建造、簡易水道の整備などの財源として、お尋ねの過去三年間をとりますと、延べ三十六の市町村で総額十八億円、八十一の事業に活用されてきたところでございます。こうした事業の実施によりまして、急病人を搬送する緊急車両の迅速かつ安全な通行が可能になる、また離島航路の利便性が向上した、生活に不可欠な安全な水の安定供給が図られるようになった、そういった辺地における生活環境改善に大きな効果があったと考えております。県といたしましては、この辺地債の仕組み、その効果的な活用事例につきまして、市町村の担当者を集めた会議でその周知を図りますほか、御指摘の直売所の整備など中山間地域の活性化対策としてそれぞれの市町村が実施される事業のうち、この辺地債、その活用が可能なものにつきましては、個別にその活用を助言するなど、きめ細かく対応、支援をしていきたいと思っております。